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フロントフォークをOHする
2013/03/03、33,998マイル時。フロントフォークをオーバーホールする。購入時にフォークオイルを交換してから9,350km走行。一度もオイルを換えていなかった。まず、フロントフォークをステアリングステムから抜くのだが、トップブリッジとステアリングステムのソケットボルトを外しても、写真のエアージョイントの取り付け用のフラットスクリューを緩めてガタを作っておかないとフォークが抜けないので注意する。
フォークトップにあるストッパーリングを外し、トップボルトに24ミリのメガネレンチをかけてフォークを回しながら下に抜く。エアージョイントのOリングが抵抗になっているので真っすぐに引き抜くのは難しい。ちなみにトップボルトはフォークを抜いてからでもメガネレンチをかけて一気にインパクトを与えれば簡単に緩むので、最初に緩めておかなくても大丈夫だ。
アウターチューブをバイスに固定し、ボトムの8mmのキャップボルトを外す。6番の六角レンチを使うが、穴が浅いためにナメやすい。ナメてしまった場合は、ヒートガンでボルトを暖めておいて、オーバーサイズの1/4インチの六角レンチを金槌で打ち込めば、しっかりとレンチがボルトに食い付いて外すことが出来る。この際、ヒートガンで暖めることでボルトのロック剤も柔らかくなって効果的。その後、トップボルトを外してオイルを排出。トップボルトを外す際は、フォークスプリングが勢いよく飛び出してくるので注意。
ダストシールを細いマイナスドライバーでこじって取り外し、その下のスナップリングをスナップリングプライヤーを使って外す。今回はスナップリングがサビ付いていたので、CRC-556を吹き付けて気長に何度ももむようにして外す。サビは240番のサンドペーパーで落とし、スナップリングを磨いておいた。次にスライドハンマーの要領でインナーチューブを勢い良く何度も引き、オイルシールとガイドブッシュをアウターチューブから抜き出す。これでインナーチューブとアウターチューブが分離出来る。
フォーク上側から順にオイルシール、バックアップリング、そしてアウターチューブから少し見えているのがガイドブッシュ。インナーチューブを抜いたら、中のピストンの先端にはまっているストッパーリングを取って、ピストンとリバウンドスプリングを排出。ガイドブッシュとスライダーブッシュもそれぞれ取り外しておく。そしてパーツクリーナーで各部の汚れを洗浄して乾燥させる。
VF1000RのフロントフォークはTRACが付いている関係もあって、左右の構造が異なる。写真は右フォーク。伸び側減衰のオリフィスを切り替えるための長いダンピングアジャスターロッドがトップボルトから伸びている。またピストンの先端にアルミのオイルロックピースが被さっている。
右フォークのピストン。オイルロックピースの向きに注意。ストッパーリングを外すとピストンがインナーチューブから抜ける。ストッパーリングのはまる溝は先端から2番目の溝。
こちらが左フォーク。トップボルトにエア圧調整用のバルブが付いている方で、ダンピングアジャスターロッドは付いていない。また、ピストンの先端にオイルロックピースは無く、代わりにオイルロックスプリングとオイルロックバルブが取り付けられている。
左フォークピストン先端のオイルロックスプリングとオイルロックバルブ。上側にワッシャーがはまる。上下のストッパーリングを外してピストンをインナーチューブから抜く。今回はアウターチューブに付いているTRACは分解せずにそのまま。
約55,000km走行したスライダーブッシュ。テフロンが少し薄くなってベースの銅が微妙に透けていた。これは新品に交換。なお、TRACの付いた左フォーク側のスライダーブッシュは、写真のように中央に溝が入ったタイプになっているので右側のプレーンなタイプと取り違えないように気をつける。
ガイドブッシュのテフロンも薄くなっていた。こちらも交換。今回新品に変えたパーツはブッシュとオイルシール&ダストシール、ボトムのキャップボルトのワッシャー。
フォークスプリングの自由長は左右とも428mmだった。マニュアルでは414mm(使用限界406mm)となっているが、なぜかそれより長い。自分の計測の悪さのせいかも知れないが、いずれにしろヘタりはないと判断。
ピストンにリバウンドスプリングをはめてインナーチューブ内にセットし、そのインナーチューブをアウターチューブにはめ込む。右フォークのピストンにオイルロックピースをはめるのを忘れないように注意する。そしてまずはガイドブッシュをアウターチューブの所定の位置に打ち込む。次にバックアップリングをはめ、上からオイルシールを打ち込み、最後にダストシールをはめ込むという順。なお、オイルシールをインナーチューブに通す時にはリップを切らないように、フォークオイルやシリコングリス等を塗って慎重に・・・。
ガイドブッシュにバックアップリングをのせ、40サイズの塩ビ管を使ってガイドブッシュを打ち込む。大きな木槌を使うといい感じ。バックアップリングを座面に当たるまで打ち込めばガイドブッシュが所定の位置に収まる。なお、アウターチューブ底に突き出ているスタッドボルトを傷付けないよう必ず木材等を下に敷くようにする。あるいはナットを取付けてネジ山を守るようにする。
次にバックアップリングをはめる。この際、バックアップリングのエッジの丸い方を下に向ける。そして写真のオイルシールを打ち込む。シリコングリスかフォークオイルを外周に塗って滑りを良くしたあと、メーカー名の刻印された面が上側になるようにセット。これに予備のバックアップリングなどを被せておいて同じく塩ビ管を使って打ち込む。スナップリングのはまる溝が現れたらOK。ちなみに打ち込み過ぎるとオイルシールが変形してインナーチューブの動きを妨げてしまう場合があるので注意。
そしてインナーチューブ内のピストンの下部をソケットボルトでアウターチューブに固定する。ワッシャーを新品に交換し、ソケットボルトには緩み止め剤を塗布。ちなみに締め付けトルクは1.5〜2.5kg-m。フォークを垂直に立てた時、インナーチューブが自重でス〜と下がらない場合、何か取り付けをミスしているのでやり直す。
今回交換するフォークオイルは、モチュールフォクトリーラインLIGHT 5W。少し硬めの粘度となる。
フォークオイル量は右440cc、左460cc。インナーチューブをポンピングしながら少しずつオイルを注ぐ。特に左はTRAC内部にすぐ回らない分、油面が一気に高くなってエアージョイントの穴からオイルがこぼれがちなので注意。何度もポンピングし、気泡を出してオイルを行き渡らせる。そしてオイルの油面の高さで微調整。インナーチューブを一番押し込んだ状態で、左右とも油面がトップエンドから170mm下の位置になるようにする。これはスポイトの170mmの位置にストッパーをつけてオイルを吸い上げて調整すると楽。オイル量でインナーチューブ内のエアスペースが決まるので、オイル量は油面を基準にするのがより良いと思う。
フォークオイルを入れたら、インナーチューブ内にフォークスプリング、スプリングジョイントシート、スプリングカラーの順でセット。フォークスプリングは先端の径が少し小さくなっている方を下に向けて入れる。そしてトップボルトのOリングに少しフォークオイルを塗って、スプリングカラーを押し込みながらトップボルトをねじ込む。右フォークのトップボルトは、下に伸びているダンピングアジャスターロッドのフラット面をピストンの穴に合わせて差し込む。これで完成。
フロントフォークのオーバーホールが済んで、さっそく試走。フォークオイルの粘度を硬めにしたせいか、短いストロークの中でしっかりと減衰が効いている。特に圧側の減衰が強くなり、リーニングポイントでの突っ張り感が出てきた。これは悪い感触ではなく、ナチュラルなアンチノーズダイブが効いている感じ。いままでのように減速とブレーキングでしっかりとフロントタイヤを押し付けておかなくても簡単にリーンに持ち込めるのがイイ。リーンがとても楽になった印象だ。TRACをキャンセルし、硬めのフォークオイルにするセッティングはかなり効果的だと感じた。
ちなみにいままでも若干硬めのモチュールファクトリーラインLIGHT 2.5W-5Wを使用していたが、9千キロ以上走ったことと、大きくピッチングさせるハードな走行を続けていたせいでかなり劣化が進んでいたと思う。フロントフォークはオーバーホールはともかく、フォークオイルの交換をマメにしないと走りに大きく影響してしまうと感じた。