ステアリングステムをOHする

ステアリングがちょうど直進位置でコクッと止まるようになってしまった。ベアリングレースの打痕でそんなクリック感が出てしまったのだと思う。そこでステアリングステムのベアリングを打ち換えてオーバーホールすることに。VFはアッパーとアンダーカウルを外すだけで作業出来るのがありがたい。

上下のベアリングとロックワッシャー、そしてダストシールを注文。ベアリングはそれぞれインナーレースとアウターレースもセットになっている。ステアリングトップのダストシールは再利用出来るので注文しなくてもOKなのだが、ボトムのダストシールはインナーレースを打ち抜く時に壊れるので新品が必要。ちなみにこれらの交換パーツは全てNSRと同じ品番だった。

最初にステアリングステムナットを30mmのボックスレンチで緩めておく。そしてクランクケースにジャッキを当ててフロントを浮かした後、ブレーキキャリパーを外し、ホイール、フロントフェンダーを外す。次に、ハンドルバーのマウントボルトを緩め、ストッパーになっているハンドルバー上のリテーナーリングも取って、フォークを抜く準備。

左右のトップピンチボルトを緩める。その下のエアージョイントはそのままでOK。

ブレーキホース3WAYジョイントをフレームから外しておき、ステアリングステムのボトムピンチボルトを緩める。これでフォークが下に抜けるけれど、エアージョイントのOリングなどがあって少し固いので、フォークを回転させながら下に。途中まで抜いたらストッパーリングを外して、最後まで引き抜く。

こんな感じにフォークが抜けた。ケーブルやホースがついたままの左右のハンドルバーも邪魔にならないところに移動させておく。

ステアリングステムナットを取り外し、ピンチボルトを緩めれば、トップブリッジが取り外せる。

ロックナット、ロックワッシャー、ステアリングアジャストナット、ダストシールを外すとベアリングが顔を出す。

ステアリングステムを引き抜く。そしてステアリングヘッドパイプの上下に圧入されているアウターレースをそれぞれ取り外す。これは細いパイプ棒などをヘッドパイプに突っ込んでレースの「尻」を少しずつ叩いて打ち抜く。

ロアベアリングのアウターレース。はっきりと打痕が出来ていて、引っかかる。インナーレースも同様の状態。またベアリングのボールもグリス切れでスムーズに回転しないし、摩耗・変形も進んでいるようだった。23年も交換していないのでこれは仕方ないところ。

ステアリングステムに圧入されているロアベアリングのインナーレースを打ち抜く。タガネを使ってダストシールごと叩く。この際、ステム先端のネジ山を潰さないようにステムナットをはめて作業する。

新しいダストシールをはめ、インナーレースにグリスを塗って圧入。取り外した古いレースを逆さに被せて当て金にして、適当なステンレスパイプ等を使って叩き入れる。古いレースも圧入されてしまうので、これは後でまたタガネで打ち出しておく。

ロアベアリングのアウターレースをステアリングヘッドパイプの下側に圧入。これも古いレースを被せて当て金にして、さらに適当なボックスレンチとエクステンションバーを当てて叩き込む。斜めに打ち込まないように周囲を均等に叩く。そして確実にレースが底まで打ち込めているかよくチェックしたら、一緒に叩き込んだ古いレースだけまた上から打って抜いておく。同じようにアッパーベアリングのアウターレースもステアリングヘッドパイプの上部に圧入。

新しいベアリングにグリスをたっぷり塗り込んで装着。ちなみにVFにはグリスリテーナーがステムの途中に入っているので、これも先に落し入れておく。ダストシールを被せ、そしてステアリングアジャストナットを締め込んでステアリングの「重さ」を決める。締め付けトルクは2.3〜2.7kg-m。何回かステムを回転させて締め付けトルクの調整。ロックワッシャーを入れ、その上にロックナットを被せて締め付け。この際、ステアリングアジャストナットはなるべく動かさないようにしておいて、ロックナットだけを締め付けるようにする。最後にロックワッシャーの爪を立ててロックナットの溝に入れる。

VFのフロントフォークのインナーチューブはエアージョイントでつながれる仕組み。そのための穴が開いているので、横に倒すとオイルが漏れてくるので注意。下のラインはストッパーリングが入る溝。ここのストッパーリングがエアージョイント下部にしっかり当たるまでフォークを押し上げてセット。

ボトムピンチボルトを締め込みフォークを固定(締め付けトルクは3.2〜3.8kg-m)。そしてホイール、ブレーキキャリパー、フェンダーを付け、ブレーキホース3WAYジョイント等もセット。ジャッキを落として左右のトップピンチボルトを締め付け(締め付けトルクは0.9〜1.3kg-m)、ステアリングパイプピンチボルトも締め付ける(締め付けトルクは2.0〜3.0kg-m)。最後に中央のステアリングステムナットを締め付けたあと(締め付けトルクは9.0〜12.0kg-m)、ハンドルバーを固定する(締め付けトルクは3.0〜4.0kg-m)。

ブレースホルダーは前方のボルトを先に締めてから後ろを締め付ける(締め付けトルクは0.8〜1.2kg-m)。ブレースボルトはフォークを数回上下させて位置決めしてから締め付け(締め付けトルクは2.4〜3.0kg-m)。

またジャッキアップしてフロントフォークを伸ばした状態でエアーを入れる。規定値は0〜0.4kg/cm2。今回は0.3kg/cm2にしてみた。接地してフォークが縮むとさらに加圧される。

ジャッキアップしてフロントを浮かしたまま、どのくらいでステアリングが切れ出すかプリロードのチェック。規定値は1.0〜1.6kg。今回は軽めにアジャストナットを締めたので400gの加圧で動き出した。

試走してみると深いリーンアングルまでとてもスムーズに移行するので安心感がまるで違う。いままで膝が接地するぐらいのリーンアングルで「グラグラ」とした感じがあったが、それが無くなったのでさらに深くリーンさせても大丈夫そう。ただ、直線での手放し走行で一度フロントがぶれ出したので、やはり締め付けが少し不足している気がする。その後、フロントのぶれの再現は出来なかったが、もう少し固めにセッティングし直しておいた方が良さそうだ。

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