TRACをキャンセルする

左側のフロントフォークに付けられているアンチノーズダイブ機構「TRAC(トラック)」。フロントブレーキキャリパーが上部のキャリパーブラケットボルトを支点に前後にスイングするように作られていて、ブレーキをかけるとブレーキングの反力でキャリパーがキャリパーブラケットごと前進してフロントフォークのコントロールピストンを押す。すると縮み側の減衰のメインのルートが閉じられ、フォークオイルがより細いオリフィスに流れるルートに切り替わる。これでフロントブレーキング時だけフロントフォークの縮み側の減衰力増して、アンチノーズダイブ効果が生まれるという仕組みだ。
しかし、
このTRACのせいで、フロントフォークが沈み込まない前にブレーキが利くため、ステアリングヘッドパイプがとても高い位置にあるような感覚をライダーに与える。まるで長いフロントフォークのバイクに乗っているようで、フロントの接地感がない。また、ブレーキをリリースすれば伸び側に切り替わるはずのフロントフォークが逆に沈み込んだりと、とても不自然な動きをする。あれこれ試しているうち、VFを乗りにくくしている最大の原因がこのTRACにあると思うようになってきたので、この際、キャンセルすることに。
VF1000RのTRACのキャンセルの仕方は簡単。ブラケット
とコントロールピストンをつないでいるアンチダイブピンボルトを抜くだけ。

アンチダイブピンボルトをいておくと、前進したブラケット下部がコントロールピストンを押さないままフロントフォークの座面に当たって止まる。TRACの内部パーツを加工しなくて済むのがありがたい。また、キャリパーを後進させる大きなトルクは無いので、簡単にピアノ線などでブラケットをフォークに括り付けておく。

ただピアノ線では見栄えがよくないので、ステーを作ってきっちり固定することにした。ホームセンターで買ったスチールのUボルトプレート(5/16×2)を金ノコで切って加工。

前端はフロントフォークのボトムケースにある突起部に引っ掛けることが出来るよう、鉤爪形に加工。穴状にしても良かったけれど、鉤爪ならホイールを外さなくて取り付けられるので楽なのだ。後端はドリルで穴を開け、ブラケット下部にあるスピードメーターケーブルクランプの取り付け部に固定する。

鉤爪をボトムケースの突起部に回り込ませて取り付ける。これで後ろのボルトを取り付ければ、もうステーが前に行かないので鉤爪でも外れないのだ。

テー後端をスピードメーターケーブルクランプと一緒に固定。ステーの穴の位置現物合わせきっちり出したので、ガタもなくキャリパーを固定出来た。

さて、気になるTRACキャンセルのインプレッションは・・・ひとことで言って、これでごく普通のフロントフォークになってくれた
ようだ。底付きすることもないし、フォークの動きも自然。少し気になったのは、ブレーキがフォークが沈み込んでから効くので、この利き始めまでタイムラグで制動力が弱くなった感じが出る。しかし制動力自体は変わっていないし、これバイク本来のブレーキングの感覚なのだ。予想していた通りステアリングヘッドパイプが高い嫌な感覚が無くなったし、フロントの接地感出てきた。これならなんとかなりそうだ。

後日あらためてチェックしてみると、キャリパーブラケットがコントロールピストンの基部を少し押しているのが分かった。これを回避するためにキャリパーブラケットの当り面をリューターで少し削って逃げを作また、キャリパーを取り付けると、このキャリパーコントロールピストンの頭を微妙にしていた。本当はここも少し削ってやりたいところが今回はパス。いずれにしろ、いままででも十分TRACがキャンセル出来ているようなので良しとしよう。

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