フロントブレーキキャリパをOHする
フロントブレーキは少し引きずりがある状態。ピストンシールが劣化していると思うのでOHすることに。まずはブレーキキャリパを割るためにトルックスボルトをE12ソケットで緩める。フルードが漏れない程度にしておく。ブレーキホースのジョイントナットも11ミリのスパナで少し緩めておく。最後にキャリパボルトを外してキャリパを取り外す。
ジョイントナットを回せばブレーキホースとキャリパが分離出来る。この時、取り外したキャリパをなるべく高い位置に上げてフルードの吹き出しを防ぐ。ホースを外したらすばやくジョイントを上に向ければほとんどフルードは漏れてこないはず。
ブレーキホースの穴に竹串を差し込んで封印し、フロントカウルステー辺りにガムテープで固定しておいた。ブレーキマスターシリンダより高い位置なので、これでほとんどフルードの漏れは無い。どうせフルードは交換するので全部抜いてしまってもいいと思うが、マスターシリンダなどに古いフルードを残しておいて、新しいフルードでそれを押し出すカタチでフルード交換をした方がエア抜き作業が簡単に行くと思う。
例によってハンガピンプラグをショックドライバーで外し、次に奥のハンガピンを六角レンチで緩める。これがとても固く、六角レンチがしなるだけ。無理するとなめる事もあるので、まずはCRC5-56をネジ部にかけておいて、さらにバイスプライヤで六角レンチ中心部を挟んで回す。この方法だと六角レンチのしなりが無くなり、一気にボルトにトルクをかけられる。カキンッという感じでハンガピンが見事に緩んだ。
もうかなり減ってしまっていた古いパッド。その分、ピストンも押し出されているわけなので、外に出ているピストン表面に傷がないか心配。
ブレーキパッドを1枚かませておいて、4つのピストンをキャリパからいっぱいに押し出す。これはホースを外す前にやっておけば楽で良かったが、今回は水を注射器で送り込んで水圧で押し出してみた。圧搾空気でやってもいいようだ。水につけたついでに中性洗剤で軽く汚れを洗っておいた。キャリパの汚れは台所洗剤で洗うのが一番きれいになるようだ。
緩めておいたトルックスボルトを外してキャリパを割る。ピストンは軸用のスナップリングプライヤを使って内側を押し広げるようにして挟み、これで抜き出す。すでにいっぱいまでピストンを押し出してあるので簡単に抜けるのだ。
ピストンシール、ダストシールを取り外し、中を中性洗剤と子供用歯ブラシできれいに洗浄。特にダストシールの溝が一番汚れているので念入りに。密着を妨げるような厚みのある汚れが取れればOKだと思う。念のため、フルードの通り道も注射器で水を吹き入れて洗浄。
ブリーダバルブも外してよく洗浄。そのあとはとにかく水分を取り除く。今回は一晩乾かしたあと、パーツクリーナを吹き込んで水分を完全に抜く。
キャリパのシリンダやフルードの通り道の水分も念入りに除去。ヒートガンで熱風を送り込んで強制的に乾燥させたあと、パーツクリーナを吹き込んでおいた。さらに足踏みポンプで各穴からエアを吹き込んでチェックしてみた。これで少しでも水滴が出てくるようならダメだ。水分が残っているとフルードに溶け込んでフルードを劣化させるので注意。
計8個のピストンをきれいに磨く。やはりダストシールの当っていた辺りに少し錆びが出ていた。これを2000番の耐水ペーパーにCRC5-56を付けて軽く磨く。なるべくピストンシールの当るところはそのままにして、爪が引っかかるような傷や汚れの無いようにツルツルにしておいた。
ハンガピンも800番の耐水ペーパーで磨く。段差がなくなればOK。街乗りバイクだとここをグリスアップするが、こまめにメンテするサーキット仕様なのでグリスは塗らないでおく。ブレーキパッドやディスクプレートにグリスが付くのを避けるためだ。
フロントブレーキは4ポッドの異径対向ピストンなので、ピストンシール大4枚、ピストンシール小4枚、ダストシール大4枚、ダストシール小4枚が必要。全部新品に換える。それとジョイントシールも4個新品に交換。油圧ブレーキはピストンシールの弾性でピストンを戻しているわけなので、これが劣化しているとブレーキを引きずることになる。
今回、新しく入れるブレーキパッドはM'sで購入したHRCのレーシングブレーキパッド(45105-NKD-970)。スプリントレース用で1キャリパ5,460円。たぶん消耗も早いと思うが、効きは期待出来ると思う。いろんな市販のパッドが売っていて悩むけれど、中には純正パッドより性能がかなり落ちるものがあるので気をつけなければ。それにディスクプレートへの攻撃性が高い物にも注意。このHRCのものなら、優秀だと言われている純正パッドよりさらに性能がいいのは間違いないと思って選択。一応、パッドの角をやすりで削って面取りをしておいた。たぶん、初期の食い付きがこれで良くなると思う。
ブレーキキャリパをセットして仮止めしておいたトルックスボルトを締め付ける。締め付けトルクは3.0〜3.5kg-m。数回に分けて均等に締め込むようにする。そしてキャリパボルトでしっかりとフロントフォークにキャリパを装着。締め付けトルクは2.4〜3.0kg-m。今回フロントブレーキフルードに選んだのはKさんオススメのワコーズSP-R(コンペティションスペシャル・500ml)。DOT5.1という高性能レーシングブレーキフルードで、ハードなブレーキングを続けてもレース後半でダレが少なく、握りしろなどもあまり変わらないとか。確かに、想像以上にフルードの全容量は少ないので、熱などの影響でフルードはかなり過酷な状態になると思う。なので品質の違いがタッチなどにはっきりと出てしまうというわけか・・・。
そしてエア抜き。リアブレーキキャリパOHの時と同じく、ワンウェイバルブを取付けたホースをブリーダバルブに取付けて、気泡が出てこなくなるまでしっかりとエア抜き。もちろん左右のキャリパとも。
ワコーズSP-Rはまったくの無色透明。リザーブカップにフルードを継ぎ足しながらエア抜きを続ける。回りにはフルードがこぼれてもいいようにキッチンペーパーでガードを。フルードは塗装面、プラスチック、ゴム面を侵すのでかかったらすぐに水で流すか、パーツクリーナーできれいにしておく。
引きずりのあったフロントホイールも軽く手で回してみると何周もくるくると回るようになった。これでなくては! また、エア抜きしてもまだブレーキレバーのタッチが少しスポンジーな感触だったので、タイラップでブレーキレバーを引いた状態にして一晩放置してみた。これでタッチもガチガチに。たぶんマスターシリンダ内のエアがしっかりとリザーブカップの方に抜けてくれたのだと思う。
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