フューエルタンクのへこみを修正
ヤフオクで赤/白タンクをゲット。6500円。タンク内に錆はまったく無いし、日光による赤色の退色も無し。ただし、タンク後部に写真のような大きなへこみがあるのが難点だ。縦100mm、幅90mm、深さ10mmの強烈な陥没。バイク事故で正面からぶつかると瞬間的に身体の重みがこの部分にかかってこんな具合にへこむのだ。このへこみさえなければ新同のタンク。中古相場だと2万円はする。
実はコレを試したくてへこみタンクを購入した。アメリカのテレビショッピングで有名らしいデントリペア(へこみ修正)ツールセット。その名も「ひっぱり君」。車のボディに出来たデントにグルーボンドでタブをくっつけ、それを引っ張ることで修正するというちょっと怪しい通販商品。手芸に使うようなグルーボンドの粘着力で本当に鋼板が引き出せるものなのか興味津々。普通は裏から叩き出すか、あるいはスポット溶接でワッシャーを溶接して、それにスライドハンマーを掛けて引っぱり出すのだが・・・。さっそくひっぱり君をヤフオクで落札、2100円ナリ。
グルーガンにグルースティックをセット。レバーを引くと黒いグルースティックが先端のヒーター部に押し込まれ、グルーが溶かされて出てくる仕組み。100円ショップにでも売っていそうなちゃちな作りだ。タンクのへこみ部分をシリコンオフでよく脱脂しておく。これはパーツクリーナーでも可。グルーガンのコンセントを差して5分ほど温めればこれで使用OK。
タブに溶けたグルーボンドをたっぷり塗ってタンクのへこみに素早くペタッ。これで5分ほど冷えるのを待つ。次に付属のタワーバーをセットして、タブにウイングナットを取付ける。タワーバーにはふたつの「足場」がついていて、これはピロボールで自由な角度に曲がる。そしてこの状態でウイングナットを回せばタブが引き上がり、一緒にタンクのへこみも引っ張れるという理屈なのだが、はたして・・・。何度やってもすぐにグルーボンドが剥がれてしまってダメ。思った以上にスチールが固かった。RSのようなアルミタンクならまだしも、もともとが車の薄い鋼板用だから、バイクのタンクでは無理か・・・。
タブは少しでも斜めに引っ張り上げようとすると外れてしまう。正確に垂直に引上げればかなりの荷重に耐えられるようなので、タブのボルトにマルカンボルトをナットでつなぎ、さらにマルカンボルトにロングボルトを通して、これを両手で引っ張ってみた。垂直に引上げることを意識して引っ張ると、推定100kgぐらいで引っ張った時にガンッと大きな音がしてタブが外れた。調べてみるとほんの少しだが、確かにへこみのフチが小さくなっていた。タブが外れる瞬間にタンクのへこみが大きく引っ張られ、それでコンマ数ミリ変形してくれるようだ。
これに気を良くして今度はロングボルトをハンマーで叩き、一気に力を加えてみることにした。ところがこの方法ではすぐにタブが外れてしまった。どうやらじわっと力が加わった方がより大きな荷重に耐えられるようだ。これはまぁ、ボルトを外す時に一気に荷重しないとナメてしまうのと同じ理屈か・・・。
そこでまた手で引っ張る作業を繰り返すことにする。タンクの先端にラバーをかませ、バイスプライヤーで板に固定。そして両足でタンクを押さえ、両手でロングボルトを思いっきり引っ張る。
いつの間にか縦7mm、幅8mmまでへこみが小さくなっていた。コツは縁の方から少しずつ引上げることのようだ。一気に中央を狙うと抵抗が大き過ぎてまったく歯が立たなかった。これがもっと薄い鋼板なら一気に引き抜けるかも知れないが・・・。
何度も引っ張っているうちにタブのネジ山をなめてしまってマルカンボルトと連結出来なくなってしまった。そこでタワーバーをハンドルにして写真のように引っ張ることに。背筋力は昔145kgぐらいあったから、その感覚でいくと100kg以上の力で引っ張っているのは間違いない。ものすごい粘着力! 外れた瞬間は身体が後ろに吹っ飛ぶので注意しながら何度もトライ。
付属の3本のグルースティックを使い切ってしまった。しょうがないので陶器のカップにいままで使用したグルーボンドのカスを入れて、これをヒートガンで熱してリサイクル。すぐに溶けるのでスプーンですくってタブに塗り付ける。これで何度でもグルーボンドが使えるようになった。グルーガンを使うより手早いし、うまく塗れる。
へこみが浅くなってくるとボルトで引上げる正規の方法でもちゃんと引上げられるようになってきた。というか、手でひっぱって外れない場合でも、ボルトなら外れる。どうもボルトで引っぱり上げる力の方が強いようだ。へこみは縦50mm、横50mmまで縮小。ただ、残りのへこみのエッジがだんだんキツくなってきてなかなか引き上がらなくなってきた。タンクの中央には溶接ラインが通っていて、その部分は特に固いし・・・半分諦めモードだ。
無理矢理タブを引上げたら、粘着力で硬質プラスチックのタブの外周が千切れてしまった。これほどまで引っ張っても耐えているグルーボンドの粘着力はすごい。それにタンクのクリア塗装の丈夫さにも感心した。ちなみに再塗装したタンクなどは塗装が剥がれてしまうようだ。
引っぱりを繰り返す事約100回。ようやく大まかなへこみは修正出来た。しかし、近くで見ると表面がデコボコ。割り箸を5cmほどに切って、これをハンマーで打って微妙なでっぱりを修正する。時間ばかりかかるし、そんなにきれいにはいかない。やはり5回ぐらいの引っぱりで一気に修正出来た場合のみ、美しく仕上がるのだと思う。まぁ、再塗装前提の修正と考えるなら、パテ盛りも少なく済んでいい感じなのだが・・・。それにスポット溶接で引き抜く場合などは、もちろん塗装を剥がさないといけないし、溶接の熱でタンク内のコーティングが溶けて錆が発生しやすいとも聞く。また、溶接はタンク内にいったん水を入れて完全にガソリンを追い出さないと危険なので、この水入れがまた錆の原因になる。そんな点を考えれば、この「ひっぱり君」はスポット溶接以上に使えるヤツかも知れない。
今回はここまでが限界。光を横から当てるとデコボコの陰影が出て美しくない。きれいに仕上がったらこのまま使おうと思っていたが、見栄えがイマイチなので大型タンクパッドを貼ってごまかすことにする。最初から失敗したらそのつもりだったけれど、ちょっと残念。ひっぱり君、ご苦労様。
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