腰上をOHする

88テラから外したシリンダ。まだクロスハッチも残っていて状態はいい感じ。フロントもリアも壁面に傷はないようなのでこのままきれいにして使用。今回、クランクセンターシールの生きている88初期型エンジンのクランクケースに88テラのシリンダ、ピストン、シリンダヘッドを等をOHして取付けることにする。

88テラのシリンダヘッド。かなりカーボンが付いていたが、デトネーションの痕もなく、まだまだ使える状態だった。もちろんフロントもリアもOK。

RCバルブはカーボンでかなりガチガチの状態。これだけひどいとスムーズに動いていなかっただろうし、全開までちゃんと可動する状態だったかどうか。実際エンジンを降ろした時、フロントのRCバルブは固着して動かない状態だった。エンジンが暖まればその固着が取れたかも知れないが、少なくともエンジン始動直後はRCバルブの固着でサーボモーターに負担がかかっていたと思う。

カーボンをCRCとワイヤブラシでゴシゴシ擦って落とす。あとで聞いたところ、カーボン落としには有機溶剤のアセトンが良いらしい。

こちらは88テラのフロントシリンダ。かなり下まで吹き抜けていて、ピストンリングが消耗している様子が感じられた。新品の89Dピストンのストックもあるが、これもまだ1万kmそこそこのピストンなので今回はリアもフロントもそのままきれいにして使うことにする。

クランクケースからリードバルブを外す。ガスケットはCRC5-56や真鍮ブラシ、スクレイパできれいに。

リードバルブをチェックしてみると完全にリードがしまっていて、状態はばっちり。これならなにも問題はないだろう。ちなみに初期型エンジンの方のリードバルブにはやや浮きがある箇所が見られ、ガソリンを垂らしてみると、ベースに密着していない面が白く浮き出てきた。

今回は塗装はがし剤をシリンダに入れてカーボンを落としてみる。ジェル状になっていてかなり密着度は高そう。特に掃気ポート内やRCバルブが収まるスペースに念入りに垂らし、そして細い筆で撫で付けた。こういう狭いスペースは真鍮ブラシも届かないのでケミカルに頼るのが一番。

こんな感じでドロドロ。40分ほどしたら水洗い。水と一緒に塗装はがし剤とカーボンがきれいに流れてかなり良い感じに。このケミカルは正解だった。

念のため、メタルクリーンαに24時間浸けてみた。80度の湯10リットルに対して300gの濃さ。塩酸とかケイ酸とかホウ酸とが入ったアルカリ溶剤で、12時間が漬け込みの目安とか。金属表面に保護膜も出来るらしい。たしかに表面がきれいになったが、カーボンの落ちはイマイチか・・・。シリンダヘッドはあらかじめCRC5-56とナイロンブラシで磨いておいた。

錆びたノックピンがシリンダに残ってしまっていたのでこれを叩き出す。付け替えるクランクケース側にもすでに付いているからだ。先をマイナスドライバーで折って畳んでおいて、適当なスチールの棒で叩き出す。先にCRC5-56で潤滑させておく方がいい。

ピストンはCRC5-56とナイロンブラシでほとんどカーボンがきれいになった。内側はメタルクリーンαがかなり有効だった。リングの溝は特に念入りにカーボンを落としておいた。

ヘッドの燃焼室もこんな感じできれいに。ガスケットはスクレーパとCRC5-56できれいにはぎ取っておいた。

きれいになったシリンダ。まだまだ使えそうな感じだ。NSメッキは丈夫で薬品やサンドペーパーにも耐えると聞いているので、少しぐらいの抱きつきがあっても修正出来る気がする。ちなみに88テラのシリンダはCシリンダ、ピストンはDピストン。今回手に入れた初期型エンジンも同じくCシリンダにDピストン。

メタルクリーンαのあとは、ステンレスブラシとCRC5-56でシリンダヘッドとシリンダの外を磨く。梨地仕上げなのでステンレスブラシでひっかくように磨くとそれだけでピカピカ。あっと言う間に輝く外観になってしまった。

初期型のクランクケース。かなり油汚れがあったが、灯油やCRC5-56、パーツクリーナーで洗浄してみると錆が少なくて割ときれいだった。ガムテープでしっかり養生して、ステンレスブラシ、真鍮ブラシ、800番の耐水ペーパーできれいに磨く。これは腰上OHで一番大変な作業だ。88テラのクランクケースならきれいだったのだが、センターシールが抜けてしまっているので仕方ない。

クラッチスプリングは新品時38.9mmで38mm以下は要交換。テラは38.9mmそのままだったのでこれを使用。初期型エンジンのものは38.5mmだった。また、クラッチディスクは新品時2.92〜3.08mmで2.5mm以上が使用限度。テラは2.9mmほど。初期型エンジンの方も2.9mm程度。こちらもテラのモノに付け換えるが、2枚程メタルプレートが焼けていたので、それは初期型エンジンのものを使用。クラッチディスクの溝を2枚重ねの金ノコの歯で深くする裏技もあるようだが、今回はパーツクリーナーできれいにするだけに留めておいた。メタルプレートは面取りしてある方をエンジン側に向けて、クラッチディスクは番号のある方を外側で組み付け。2ストオイルを塗りたくっておく。

クラッチのスチールボールにはモリブデングリスを4ストオイルで割ったものを塗って組み付けた。キックペダルのシールのリップ部にも同じくこのスペシャルグリスを塗布。その他、クラッチのジャダスプリングの向きに注意することと、ウォーターポンプシャフトのワッシャーも忘れずにセットしてRクランクケースカバーを取付ける。

きれいにしたシリンダ、シリンダヘッドを取付ける。シリンダナットは2.3-2.7kg-m。シリンダヘッドナットは1.2-1.6kg-m。オイルドレンボルトは1.5-2.5kg-m。RCバルブシャフトナット(逆ネジ)は0.8-1.0kg-mのトルクで。RCバルブシャフトナットは軽くでいいと思う。なお、ドライブスプロケットは初期型の方が程度が良かったのでこちらを使用。インシュレータ、ピックアップコイルはテラから。キックペダルもテラのものを。キックペダルの締め付けトルクは3.5-4.5kg-m。

シリンダの締め付けは、まず仮止めしたあとにクランクを数回回してセンター出し。次に規定トルク最大値で締め付けてガスケットをつぶし、いったん緩めて再度クランクを回してから最後に規定トルク最低値で締め付ける。同じようにシリンダヘッドも最低トルクでいいようだ。すべて対角の順で少しずつナットを締め付ける。

スタッドボルトには錆び止めとトルク管理のためグリスを塗ってから締め付け。ガスケットには2ストオイルを塗っておいて次回剥がしやすくしておいた。

RCバルブもテラのモノを使用。シャフトに取付けてみて先端のガタは1mm以下ならOK。RCバルブシャフトシールとスペシャルEリングは新品に交換。RCバルブシャフトシールの打ち込みは面一以上に打ち込むと問題がありそうなので適当なところでやめること。

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